「予防歯科」名医を訪ねる
「あなたの将来を変えるメンテナンスを」 -For Your Health & Wellness-
川勝歯科医院 歯科医師 田中利典
クリニック開設の経緯ついて教えてください
川勝歯科医院は先代の頃からここ(荻窪)で診療しています。先々代も同じ場所で歯科医院をやっていました。今は私の妻である田中紀子が2009年に引き継ぎ、女性が院長という新たな体制で日々の診療に取り組んでいます。 私は米国での歯科大学院を卒業して帰国した2010年以降、この川勝歯科医院で歯内療法専門医(歯の根の治療の専門医)として診療を行っています。夫婦で同じ職業で同じ職場というとよく驚かれますが、幸いなことにお互い専門分野が違うので、程よく助け合いながら毎日を乗り切っているという感じです。
院長である田中紀子先生と二人三脚で川勝歯科医院を支えている。
東京都杉並区にある川勝歯科医院。 まるで会席料亭のような佇まいで清閑な雰囲気が漂う。
どのような患者さんがいらっしゃいますか
来院される方は大きく二つに分けられます。一つは歯の根の治療で他院からのご紹介で来院される方、もう一つは地域のかかりつけ歯科医院として治療や予防のために来院される方です。 私の専門は「歯内療法学」といい、歯の根の痛みや腫れでお困りの方への治療を行っています。患者さんにはかかりつけ歯科医院がすでにあり、そこからご紹介いただいて根の治療のみお手伝いするという流れです。そのため、いらっしゃる方は杉並区外はもちろん、関東圏外からもお見えになります。治療が終わるとかかりつけ歯科医院で続きの治療や予防を受けることになります。歯の根の治療でこのような医療連携を経験された方はまだ少ないと思いますが、例えば親知らずの抜歯で大学病院を紹介してもらい、その後はいつもの歯科医院に通うようなものと言えば分かりやすいでしょうか。特に欧米では患者利益が最大限になるよう、一般歯科医と専門医との医療連携はよく行われています。 もう一方の一般歯科で受診される方は、歯の治療だけでなく定期検診や予防メンテナンスを希望して来院されています。こちらは院長はじめ歯科衛生士が診療を担っており、初診で来院されてもすぐに治療を行わずに口腔状態の把握や改善を最初に行っていくことが特徴です。したがって、「痛いところだけ診てほしい」という方にはご満足いただけないかもしれません。しかし「今どうなっていて、どうしてこうなってしまったのか」や「これから同じことで困らないためにはどうすれば良いか」といったお話を治療の最初の段階でお伝えしていますので、ご自身のお口のこと、身体のことを真剣に考える良いきっかけになると思います。
患者さんに対して「なぜ、定期的なメインテナンスが必要なのか?」を どのようにご説明されていますか?また、患者さんの反応はいかがでしょうか?
「健康は失って初めてその価値が分かる」という言葉があります。歯で痛みや腫れを経験された直後は、治療後の定期的な予防メンテナンスを「自分ごと」として捉えやすいので、皆さんよくご理解くださいます。一方で、歯でさほど困った事がない人は予防メンテナンスの意義を知る機会がないかもしれません。 ここで視点を変えて、皆さんは民間の生命保険や医療保険に加入しているでしょうか。命を失って残された家族に、あるいは病気をして働けなくなったら、として、加入していれば定期的に保険料をお支払いしていると思います。非常時の避難用品なども同じで、起こっていない未来に対して想像力を働かせて準備をすることは意外と身近なことです。 歯で「起こって欲しくない未来」というと、新たなむし歯や歯周病の進行、そして歯の喪失です。しかしここからもっと想像力を働かせてみてください。口を開けて笑う事が恥ずかしい、口臭が気になる、好きなものが食べられない、食事が美味しくない、口元が急に老け込んでしまう、など、実は毎日の生活に大きく影響することがたくさんあるのです。となると、生命保険や医療保険に加入するときと同じく、健康な時にじっくり考えて真剣に取り組むのが一番だと思いませんか。そのためには、お口の様子をご自身が把握し、むし歯や歯周病の発症リスクを知り、毎日自分でできることを教えてもらう必要があります。歯磨きは幼少期の家庭での経験がベースになっている事が多く、新しい知見などでアップデートされないまま自己流になっている方がほとんどです。今何本歯があって、治療済みの歯が何本あるのか、今後気を付けるべきことは何か、など、口腔内写真やエックス線写真、唾液検査や歯周病検査を通じて「見える化」すると、それほど歯に困った事がない人でも準備する意識は芽生えてくると思います。 また、「歯医者さんだからむし歯にならないんでしょ」と言われますが、実は歯のプロである私たちも、歯科衛生士による予防メンテナンスを定期的に受けています。知識があっても歯並びや治療歴によってはうまく磨けない部分が必ずあるのです。どんなことでも誰かに見守ってもらえるというのは安心なものです。特にお子様を連れていらっしゃる方にとっては歯科衛生士の存在は健康を育む上でとても心強いと思います。
口腔疾患と全身疾患の相関関係を踏まえて、歯科医院が患者さんに 「全身の健康」というテーマも唱える必要があると感じておりますが、 これを(海外のように)日本で広めていくためにはどうしたら良いか、とお考えでしょうか?
大学など研究機関では、口腔と全身の関係について数々の報告がなされてきています。咀嚼効率と栄養摂取の関係、要介護と歯の残存本数の関係、など、口腔の健康が保たれていると健やかに過ごせることが明らかになってきています。このような新しい知見については、健康番組などメディアでどんどん取り上げられると良いと思います。 私は、医師や歯科医師、看護師や歯科衛生士といった他業種連携の枠を超えて、口腔健康情報を医療従事者同士でも把握する仕組み作りが望ましいと思っています。歯科医師は患者さんの血圧や血糖値を気にして治療することがありますが、医師は患者さんの歯が何本あるか、かかりつけ歯科医院で定期的な予防メンテナンスを受けているか、などを気にして診療はしていないと思います。医療連携の鍵となる口腔健康情報を患者さん自身が保有し、医療従事者みんながその情報を活用して医療に取り組めるようになると、日本での予防歯科の意識がもっと身近になるのではないでしょうか。
衛生士さんや他スタッフの方々との連携で、 大切にしていることを教えてください
予防歯科医療を行う場合、歯科衛生士の存在はとても重要です。初期治療の中で生活習慣などを詳しくお尋ねする歯科衛生士だからこそ気づけることがたくさんあります。そのような情報を各スタッフが共有できるよう、カルテとは別に治療計画用紙や診療業務用紙を用意し活用しています。また、受付スタッフとも共有するため、朝晩のミーティングや二週間に一度の全体ミーティングの時間を作り、みんなで話し合える環境を作っています。人が相手の仕事であり、人が集まって仕事をしていますので、コミュニケーションの機会を作ることが一番大切だと考えています。 また、歯科医院はもともと女性ばかりの職場で、社会的背景がみな様々です。 歯科衛生士学校を卒業してすぐの人もいれば、他業種で経験を積んだ人もいます。お子さんのいる人もいれば親の介護に関わっている人もいます。患者さんを思いやって行動することと同じく、スタッフ同士でも助け合いながら連携ができるよう、できるだけ風通しがよくなるように歯科医院の環境づくりを心がけています。
乳酸菌LS1のお客様や市民の方々へ、 予防に関するアドバイスをお願いします
歯科医院ではこれまで削って詰めるといった外科処置が主流でしたが、近年は予防の概念が浸透し内科的なアプローチも求められるようになってきています。具体的には生活習慣や口腔疾患の発症リスクを把握した、歯科衛生士による初期治療と予防メンテナンスです。そのためには、規格化された口腔内写真やエックス線写真など口腔健康情報を最初の時点できちんと揃えることが不可欠です。これら資料がなく歯科医師による治療だけを行うといずれまた再治療が必要になり、結果的に歯を失うことになります。歯を失うとどうなるか、先ほどのように想像力を大いに働かせて、歯科衛生士が活躍している予防型歯科医院をぜひ受診してもらいたいと思います。 さらに言えば、肥満の糖尿病専門医や、喫煙する禁煙外来の先生に診てもらいたいと思う方はいらっしゃらないと思います。 歯科医院も同じで、治療にのみ専念し自分の口のことは気にしていない歯科医師に診てもらいたいとは思わないでしょう。ぜひご近所で良い歯科医院を見つけてほしいと思います。
(最後に)乳酸菌LS1の説明をお聞きになった、 ご感想をお願いいたします。
口腔内に対して菌のバランスに注目したアプローチは、従来の除菌・殺菌のアプローチと違ってとても興味深いです。乳酸菌というとヨーグルト等のイメージがあり、最近ではチョコレートに入っているなど目にする機会が多いですが、乳酸菌でも生菌なのか死菌なのか、酸性下でも耐えられるのかそうでないのか、といった違いがあるとは知りませんでした。腸内フローラでなく口内フローラという視点で乳酸菌LS1は開発されており、その存在はとても面白いです。 口腔内について言うと、以前は睡眠時に口腔内の菌が急激に増えるとされていましたが、最近の研究では菌量は日中とさほど変わらない事がわかっています。一方で偏性嫌気性菌の割合が多くなることが報告されていますので、口腔内常在菌のバランスのケアという点では就寝前に舐めて寝るのは理にかなっていて、しかも気軽に取り組めると思います。実際の違いを実感できるかは個人差があると思いますが、乳酸菌LS1の研究報告がもっと出てくると、健康食品としてより一層注目を浴びるのではないでしょうか。スタッフ一同、今後にとても期待している商品です。
歯科医師 田中利典
2001年 東北大学歯学部 卒業 2001-2004年 東京医科歯科大学摂食機能評価学(補綴科) 専攻生 2004-2008年 東京都新宿区 澤田デンタルオフィス 勤務 2008-2010年 米国コロンビア大学歯学部歯内療法専門医課程 ポストグラデュエート 2010年 同卒業 米国歯内療法専門医 2010年 川勝歯科医院 副院長 2011年 日本歯内療法学会専門医 2014年 山形県酒田市 日吉歯科診療所専門医診療室 歯内療法担当医(非常勤)